BOSSの独り言3

Big Island & Argos Entertainment社長の独り言

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《太陽の中の恋-2》

 僕達の横を海水浴に向かうらしいブルーメタリックの箱型スカイラインが、地響き
を上げて駆け抜けて行く。ベタベタと低い車体をくねらせ、永ちゃんの『トラべリン
バス』の残響を僕達の鼓膜に残して・・・太陽の光をギラギラと反射させ、まるで特
大のゴキブリのように走り去った。唖然と見送る僕達。
 様々な青春が、熱い日差しに誘われ、弾けんばかりに膨らんでいた。僕は、コカ・
コーラマークのTシャツが、肌に貼り付く感触で、暑い夏の始まりを予感していた。

 父は高校教師。と言っても・・・頑固で実直、堅物の聖職者のイメージとは程遠い。
いや、まるで正反対。お人好しで好い加減。面倒見は良いが、正義感に欠けた不良体
育教師。よって、教え子や卒業生には絶大な人気者である。いや、お調子者・・・
 我家に出来の悪い下宿生を置き、飲酒・喫煙の公認は当たり前。挙句の果て、試験
前に「秘密の勉強会」と称して、試験問題を有料で見せびらかす始末。が、本当の所
は・・・かなりの小心者。

 そんな父を放任主義で転がす四つ年上の母は、兎に角、目立ちたがり屋の派手好き。
イメージ通りの絵に画いた保険の外交員。負けず嫌いの性格と、トコロテンの如く毎
年押し出されてくる父の教え子達という最高の顧客養成機関を持つ母は、常に県下で
もトップクラスの成績を誇っていた。
 その絶妙な関係が、それぞれの個性を一段と際立たせる大きな要因になっていた。

 そんな両親は、良くも悪くも島では有名な浮いた存在であった。その一人息子の存
在を生きる僕は、僕以外の総ての視線に対して、いつしか虚栄心と猜疑心を隠し持つ
ようになった。そして、気に入られる笑顔と、好まれる小心と、連帯を受け入れた協
調性を巧みに使い分ける、世間体の良い子供を演じるはめになった。
 その居心地の悪さが、いつしかテレビや雑誌で垣間見る、華やかでドライ・・・自
由気ままな「都会」と言うユートピアへの、妄想と羨望と憧憬を僕の心に募らせてい
った。そして、何も起こりそうもない故郷への失望と嘲りを強くさせていった。

 港とその先に突き出た灯台が見えてきた。三十隻足らずの小型の漁船が停泊してる
小さな港。魚の生臭い匂いと、漁船の油が入り混じった鼻をつく潮の香り。淀んださ
ざ波で漁船が揺れる度、ギシッギシッと繋がれたロープの軋む音だけが、生気の無い
港に寂しく響く。
 よく子供の頃、この港を抜けて、大好きな駄菓子屋へと通った。ここの空気の匂い
が、あまり好きでない僕は、意を決して、必死で息を止めて、自転車のペダルを力い
っぱい漕いだ。
 
 何年か前、我家の下宿生が十年振りに父を尋ねて来た事があった。酒を酌み交わし、
下宿生時代の話に花を咲かせていた。仕事の楽しさや辛さ、家族が増えた事、都会の
暮らしの利便さを父に熱く語っていた。
 横でチョコンと、ジュースを飲みながらニコニコと話を訊いていた僕の心に、何故
か、無性に引っ掛かっる一言があった。

「先生。時々、無性に海の匂いが嗅ぎたくなる事があるんですよ。どこの海とも違う、
ここの海の匂いが・・・俺も歳を取ったんですかねぇ?」

 父は何も答えず頷いていた。嬉しそうに、酔って真っ赤になった顔の教え子を見つ
め、グラスを空けていた。

 最近、あの一言が、僕の中にフッと甦る瞬間がある。いや、僕から離れない。

 いつか・・・もうすぐ・・・僕も島を出て行く。いつの日か・・・僕にも、そんな
想いに駆られる時が来るのだろうか?
 徹夜を覚えた僕は、明け方の静寂の中、ポンッポンッと海の方から微かに聴こえて
来る寂しげな漁船の行く音に、ふと、そんな想いを独りぼっちの部屋で、抱き
しめてみたりする。
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  1. 2006/11/27(月) 23:59:59|
  2. さよならの青空

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プロフィール

BOSS@康記

Author:BOSS@康記
<池永康記>
山口県出身、12.7生、O型
バンドのベーシストとして上京。
バンドの夢破れ作詞家に転身。
松崎しげる、柳ジョージ、
世良公則、織田裕二、小野正利、
class、井上武英、MITSUO、
河内淳一、長与千種、等
10年間で、300曲余りを提供。
94年~アサヒスーパードライCM
プロデュースを切っ掛けに・・・
マルチプロデューサーに転身。
独自のプロデュースワークは・・・
唯一無二の変な手法との噂(笑)
近年、作詞家復活の兆し・・・
㈱Big Island
Argos Entertainment㈱
代表取締役らしい・・・(笑)


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